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虎の巻|高尿酸血症の成因

高尿酸血症の成因

高尿酸血症の成因

高尿酸血症は原発性高尿酸血症と続発性高尿酸血症に分類されます。

高尿酸血症の発症には、遺伝的な素因、基礎疾患、薬剤、ライフスタイルなど、様々な要因が関わっています。
高尿酸血症は、原因が明確に特定されない「原発性高尿酸血症」と、基礎疾患・薬剤など原因が明確な「続発性高尿酸血症」に分類されます。

高尿酸血症の主な成因
病 型 主な成因 主な疾患・病態
産生過剰型 原発性 プリン生合成の亢進 特発性(原因不明)
続発性 プリン代謝酵素異常
高分子核酸の分解亢進
  • 悪性腫瘍:造血器腫瘍
    (白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫)、
    固形腫瘍
    (乳癌、精上皮腫、ウィルムス腫瘍、小細胞肺癌等)
  • 化学療法
    (シスプラチン、メトトレキセート、シクロホスファミド)
  • 非腫瘍性疾患:乾癬、多血症、溶血性貧血
プリンヌクレオチドの分解亢進
  • ミオパチー
    (糖原病Ⅲ・Ⅴ・Ⅶ型、ミトコンドリア異常症、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症)
薬剤
  • テオフィリン
  • イノシン
排泄低下型 原発性 腎での尿酸の特異的排泄低下 特発性(原因不明)
続発性 遺伝性
糸球体濾過量の低下
  • 腎不全
循環血漿量の低下
  • 脱水
  • 尿崩症
  • 利尿薬(フロセミド、サイアザイド)
有機酸の蓄積(乳酸,ケトン体など)
  • ケトーシス(飢餓、糖尿病ケトアシドーシス)
  • 高乳酸血症(妊娠高血圧症候群)
薬剤
混合型 原発性 プリン生合成の亢進と尿酸の特異的排泄低下 特発性(原因不明)
続発性 プリンヌクレオチドの分解亢進と有機酸の蓄積
  • 糖原病Ⅰ型
  • アルコール過剰摂取
  • 過激な運動(無酸素運動)
  • 組織低酸素血症
    (ショック、心不全、呼吸不全)
肥満(内臓脂肪蓄積型)
  • メタボリックシンドローム
弘世貴久ほか:病気がみえるVol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第2版,
弘世貴久ほか 編. 東京, メディックメディア, 94, 2008改変

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「アルコール過剰摂取」と「過激な運動」は、尿酸の産生過剰と排泄低下の両方の原因となります。

尿酸産生過剰に及ぼす理由:AMPの分解
アルコール摂取、無酸素運動によりAMPが作られ、プリンヌクレオチド分解が亢進し、尿酸が生じます。
尿酸排泄低下に及ぼす理由:乳酸の産生
尿酸と乳酸は近位尿細管のURAT1で交換輸送されており、アルコール摂取、無酸素運動により近位尿細管の細胞内で乳酸が増加すると、URAT1により乳酸が排泄され、かわりに尿酸の再吸収が促進されます。

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TLS(tumor lysis syndrome 腫瘍崩壊症候群)による高尿酸血症

TLSの病態
TLSは、腫瘍細胞の急速な破壊に伴って引き起こされる代謝異常です。一般に腫瘍細胞は代謝が活発であり、細胞回転周期も早いため、大量の核酸産物を有しています。
治療に対して感受性が高い悪性腫瘍では、化学療法、放射線療法開始に伴い、腫瘍細胞が急速に破壊され、細胞内の核酸やカリウム、リン酸などが大量に血中に放出されてTLSが引き起こされます。TLSでは、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン酸血症およびそれに引き続く低カルシウム血症を呈し、重篤な急性腎不全に至る場合もあります。
TLSの疫学
米国における非ホジキンリンパ腫の検討では、TLSは42%に認められ、臨床的に問題となるものは6%と報告されました。(Hande KR : Am JMed 94:133-139,1993)
また、ベルギー、オランダ、スペインおよび英国の急性白血病と非ホジキンリンパ腫を対象としたレトロスペクティブな検討では、高尿酸血症が18.9%認められ、その中の27.8%がTLSと診断されました。
(Annemans L, et al: Leuk Lymphoma 44:77-83,2003)
TLSの診断
TLSは、特別な治療を必要としないlaboratory TLS(LTLS)と、積極的な治療介入が必要なclinical TLS(CTLS)の2つに分類されます。
LTLSは化学療法導入3日前から7日後までの血清尿酸値、血清カリウム値、血清リン値、血清カルシウム値により定義され、CTLSはLTLSの存在に加え血清クレアチニン、不整脈もしくは突然死、発作により定義されます。(Cairo MS,Bishop M: Br J Haematol 127:3~11,2004)
TLSによる高尿酸血症の治療
TLSの高尿酸血症の予防および治療として一般臨床の現場では、アロプリノール投与、大量補液、尿のアルカリ化などが実施されている他、尿酸酸化酵素ウリカーゼの遺伝子組み換えタンパクであるラスブリカーゼなども用いられます。

用語解説

PRPP合成酵素亢進症:
PRPP合成酵素はプリンde novo経路の第一ステップを触媒する酵素であり、PRPP合成酵素の活性亢進はプリン生合成を亢進させ、産生過剰型の高尿酸血症・痛風を引き起こす。世界で約30家系程度の報告しかなく、まれな疾患であると考えられている。
レッシュ・ナイハン症候群(HPRT欠損症):
HPRTはサルベージ経路においてヒポキサンチン、グアニンをプリンヌクレオチドに変換し、再利用する酵素であり、HPRTが完全欠損するとプリン体の異化が亢進し高尿酸血症をきたすほか、発症機序は不明であるが、不随意運動、筋硬直、精神遅滞、特有の自咬症を呈するレッシュ・ナイハン症候群をきたす。酵素欠損の程度が完全でないHPRT部分欠損症でも、高尿酸血症が重症の痛風や急性腎不全の原因となる。
家族性若年性高尿酸血症性腎症(FJHN:familial juvenile hyperuricemic nephropathy):
ウロモジュリン*遺伝子の突然変異により発症する常染色体優性遺伝疾患。家族内に多発し若年より排泄低下型高尿酸血症を発症し、進行性の腎障害を認める。
*ウロモジュリン:正常人の尿内にみられる最も量の多い蛋白質。ヘンレの上行脚の肥厚部分を初期遠位尿細管の上皮細胞に存在するが、生理的な役割は不明である。
尿酸トランスポーター異常(ABCG2遺伝子変異):
2009年、東大の研究グループが世界で初めて痛風の主要病因遺伝子である尿酸排泄トランスポーターABCG2遺伝子を発見した。日本人の痛風患者の8割に、尿酸排泄に関わるトランスポーターABCG2遺伝子の変異による尿酸排泄機能低下がみられ、さらに患者の1割は、尿酸排泄機能が4分の1以下しかなく、痛風発症のリスクが26倍高まる変異パターンをもっていることが報告された。(Matsuo H. et al. Sci Transl Med. 1: 5-11, 2009)
少量のサリチル酸:
サリチル酸は少量(1~2g)では血清尿酸値を軽度に上昇させ、大量(3g以上)では血清尿酸値を低下させる。
Cairo-Bishop (The new Cairo and Bishop classification system):
米国コロンビア大学小児科のCairoと米国国立癌研究所(NCI)の移植・免疫部門のBishopにより発表されたTLSの治療方針と分類法。
ラスブリカーゼ:
尿酸に直接作用して尿酸をより水溶性の高いアラントインに変換するウリカーゼの遺伝子組み換えタンパク。アラントインは速やかに腎臓より排泄され、ラスブリカーゼ投与後短時間で尿酸が低下するため、腫瘍崩壊症候群による高尿酸血症の予防、治療に期待されている薬剤である。
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